三文会

東大周辺で毎週土曜朝に行っている勉強会です。毎週違う人の話を聞きながら、参加者と発表者が相互に議論をしあいます。テーマ、参加者ともに多様性が特徴です。※2020年3月から、オンラインで開催しています。

9/4【三文会の過去の発表を振り返る】(オンライン開催)

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温故知新とは、「前に学んだことや昔の事柄をもう一度調べたり考えたりして、新たな道理や知識を見い出し自分のものとすること。」だそうです。

ネタ切れに陥りがちな三文会では今回、2011年以降の発表内容を振り返ってこれまでの傾向を見つめ、将来できそうな発表や聞いてみたい発表を洗い出してみたいと思います。

こんな方に特におすすめです。

  • 三文会ってどんな会なのか知りたい
  • 三文会にリクエストがある
  • 三文会の発表者がどんなことに興味を持っていたのかの変遷を見てみたい

みなさんの知恵をお貸しください!

【一分間スピーチのテーマ】

最近振り返って気づいたこと

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8/28【「芸」と「色」、風俗街研究への招待】(オンライン開催)

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古今東西の人類の歴史全般にわたり、必ずと言ってよいほど見受けられる現象が「売春」であり、「娼婦」という生き方である。それは、「性的魅力」を基軸とした自らを商品として販売し、その対価を経済的、政治的あるいは社会的な見返りによって得る産業である。時代や地域によって多彩なサービス形態をとり、幾度かの栄枯盛衰を経て現代まで見事に引き継がれてきた。人類最古の職業であり産業である、つまりその歴史は深く、存在そのものがまさに人類にとって因縁めいた生業である。繁殖以外に「性欲」の虜となる生物は自然界にそう多くないからだ。

「売春」は、政治的、経済的、社会的な必要性から、これまで幾度も研究の俎上に挙がってきた。しかし、その多くは未だ手つかずの未開拓地といってよい。「売春」を通史的な観点で論じた文献は驚くほど少なく、各種イデオロギーから十分に距離をとって分析できた研究はさらに少ない。「売春」が何たるかについても定説がない。個人も組織も国家も、「売春」という現象を何かと忌避してきた。それは「売春」の根底に「性欲」があり、いざ向き合ってみれば、論者を妙に感傷的にさせてしまうから、かもしれない。

「売春」という現象は、多彩な切り口から論じることができることに大きな魅力があると思う。生殖行為をサービスの根幹として半必然的に伴いながら、一般的に繁殖を忌み嫌う=人口の再生産にくみしないところに生物としての「矛盾」を感じ取るか。または、古くからある女性優位の産業として、女性活躍の最前線とみなすか。それとも女性抑圧=家父長制度の忌まわしき残留物とみるか。男が若くて魅力的な女を選ぶように、女がスペックの高い男と効率よくマッチングしたいという男女双方の赤裸々な欲望が生み出した一種の性愛市場と仮定するか。一方、「性欲」的な要素を可能な限り排除して、その独特な建築様式と風変わりな慣習にベースに古き良き「地域」の「伝統性」を語り、さらには国の「伝統文化」として、積極的に価値づけようとするか。

私が今回議題に挙げるのは、近代東京という一つの都市空間における「売春」の在り方と「娼婦」像の変遷について、「普遍的=変わらないもの」と「流動的=変わりゆくもの」をそれぞれ定義してみようというものである。江戸が東京と変わり、一国の首都として整備されていく過程で、「売春」産業も大きな再編成を経験し、業界内部での地位転換から「娼婦」像にある変化が現れた。さらに産業の発展と人口増加が圧力となって市域が拡大し、郊外の田園が市街地に転換されていく流れの中でも、「売春」産業が市街地開発の急先鋒としてその効力を発揮した。東京という都市はまさしく「売春」を基軸の一つとして発展、拡大していったのである。その一片なりとも紹介できれば幸いである。

 

【1分間スピーチのテーマ】
「風俗街」と聞いて思い浮かぶことは?

 【発表者紹介】
まつもと
大学院は都市デザイン、都市史専攻
現在はデジタルマーケティング企業でデータアナリストをしている

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8/21【『ラディカル・オーラル・ヒストリー』書評 後編】(オンライン開催)

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2021年5月22日に発表した『ラディカル・オーラル・ヒストリー』書評の後編となります。

手短に説明すると、書評対象の本である『ラディカル・オーラル・ヒストリー』とはオーストラリア先住民のある歴史家による「歴史実践」を紹介した本です。

ですが、この本の魅力はそこにとどまらず、一見すると「私たちと彼ら」という形で埋めがたい溝のあるかに見える2つの集団間で、いかに対話するか、という普遍的かつアクチュアルな問に迫ろうとしている部分にあります。

後編では前編以上に「一見して事実とは認めがたい」主張がアボリジニの歴史家からなされるのですが、著者がそれを相対主義的な「彼らには彼らの世界観があるよね」という結論に流さずどう真摯に向き合っていくか、という側面をうまくご紹介できればと思います。

ともすると発表者である吉立自身の相対主義的な部分も出てしまいそうになりますが、それを上手くかわせたか否かは、オーディエンスの皆さんのご判断に委ねようと思います。 

 

1分間スピーチ

自らと相容れない信念の持ち主と対話せねばならぬとき、どうしますか?

 

発表者紹介

吉立開途、平社員

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8/14【話題再提供『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』を読む】(オンライン開催)

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8月7日土曜の三文会で過去の話題を振り返ったときに、統計学やデータ分析に関する話題を要望する声がありました。

つきましては、因果関係の分析に関する当時の新刊を紹介した2017年5月3日憲法記念日(水曜)の話題の再提供をさせていただきます。

ビッグデータの語がはやって久しい今日この頃、統計学やデータ分析に関するさまざまな書籍が出版されています。そんな中、米シカゴ大学公共政策大学院ハリススクール助教授(現在は准教授)の伊藤公一朗氏が『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』を発表しました。「広告が売り上げに影響したのか?」「ある政策を行ったことが本当に世の中にとってよい影響をもたらしたのか?」といった「因果関係」を解明するデータ分析を解説した新書です。

「因果関係」は分析が難しく、近年の研究が盛んな分野ですが、著者は、今やデータ分析の力は誰にでも必要だとして、最新の研究成果を、数式を使わず、図表を駆使して300ページ足らずでまとめています。発売の直後には、通信販売大手Amazon.co.jpのランキングで「経済学・経済事情」カテゴリ1位に輝いています(2017年4月26日水曜時点)。

今回の三文会では、本書の概要を紹介します。夏季休暇中の方も多いかと存じますので、データ分析に関わる社会人の方のご参加、ご指導もお待ちしております。

●文献
伊藤公一朗, 2017,『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』光文社.

【一分間スピーチのテーマ】
あなたはデータ分析をしていますか?

【発表者】
熱川豊紘(にえかわ・とよひろ)
1986年和歌山県生まれ。東京大学文学部を経て、2012年に同大学大学院学際情報学府修士課程を修了。専門は科学・技術政策論。在学中、財団法人東京大学新聞社(現、公益財団法人)に勤務。朝食勉強会、三文会事務局に出向。現在、情報通信企業でマーケティングを担当。

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7/31【あなたの参考資料を教えてください】(オンライン開催)

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辞典、百科事典、年鑑など、事実を概観するための図書を参考図書 reference book といいます。
現代では、物理的な「図書」に限らず、ウェブでもさまざまな参考資料が閲覧できます。
今回の三文会では、参加者の皆さんに、趣味や仕事で頻繁に参照する資料を共有していただきたいと思います。
意外な発見がある……かもしれません。
「Googleで検索すれば十分」
「大学生はWeb of Scienceが便利では」
「『日本史年表・地図』『世界史年表・地図』は高校を卒業してからこそ役に立つ」
「高校を卒業してから役に立つ教科書といえば家庭科!」
「仕事柄『○○六法』は必携」
「契約書を書くときには『ワークブック法制執務』があるとよい」
「『理科年表』ってみんな買ってるもんじゃないの?」
「『岩波 哲学・思想事典』ってみんな持ってるもんじゃないの?」
など、心当たりがある方、主張がある方は、ぜひご参加ください。


●キーワード:参考図書、参考資料、レファレンス、リファレンス


●文献:
加藤秀俊, 1975,『取材学――探究の技法』中央公論新社.
【一分間スピーチのテーマ】
気になる分野、ジャンル
(参考資料のご紹介は、一分間スピーチと別にしていただきます)

 

【発表者】
熱川豊紘(にえかわ・とよひろ)
1986年和歌山県生まれ。東京大学文学部を経て、2012年に同大学大学院学際情報学府修士課程を修了。専門は科学・技術政策論。在学中、財団法人東京大学新聞社(現、公益財団法人)に勤務。朝食勉強会、三文会事務局に出向。現在、情報通信企業でマーケティングを担当。

 

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7/24【『英語の歴史から考える英文法の「なぜ」』の衝撃を共有したい】(オンライン開催)

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◎『英語の歴史から考える英文法の「なぜ」』の衝撃を共有したい
6月ころから仕事で英語を読む機会が増えました。
そこで、一味違う観点で英文法を学び直したくなり、英語教育などが専門の朝尾幸次郎氏(元立命館大学教授)による『英語の歴史から考える英文法の「なぜ」』(2019)を読み始めました。
すると、
「未来時制という時制はない」
「仮定法は仮定と関係がない」
「不定詞はtoが付いた動詞ではない」
など、結構な衝撃を受けました。
今回の三文会では、ただ、この衝撃を共有したいと考えています(笑)。


●キーワード:英語、英文法
●文献:
朝尾幸次, 2019,『英語の歴史から考える英文法の「なぜ」』大修館書店.


【一分間スピーチのテーマ】
英語を使っていますか?


【発表者】
熱川豊紘(にえかわ・とよひろ)
1986年和歌山県生まれ。東京大学文学部を経て、2012年に同大学大学院学際情報学府修士課程を修了。専門は科学・技術政策論。在学中、財団法人東京大学新聞社(現、公益財団法人)に勤務。朝食勉強会、三文会事務局に出向。現在、情報通信企業でマーケティングを担当。