古今東西の人類の歴史全般にわたり、必ずと言ってよいほど見受けられる現象が「売春」であり、「娼婦」という生き方である。それは、「性的魅力」を基軸とした自らを商品として販売し、その対価を経済的、政治的あるいは社会的な見返りによって得る産業である。時代や地域によって多彩なサービス形態をとり、幾度かの栄枯盛衰を経て現代まで見事に引き継がれてきた。人類最古の職業であり産業である、つまりその歴史は深く、存在そのものがまさに人類にとって因縁めいた生業である。繁殖以外に「性欲」の虜となる生物は自然界にそう多くないからだ。
「売春」は、政治的、経済的、社会的な必要性から、これまで幾度も研究の俎上に挙がってきた。しかし、その多くは未だ手つかずの未開拓地といってよい。「売春」を通史的な観点で論じた文献は驚くほど少なく、各種イデオロギーから十分に距離をとって分析できた研究はさらに少ない。「売春」が何たるかについても定説がない。個人も組織も国家も、「売春」という現象を何かと忌避してきた。それは「売春」の根底に「性欲」があり、いざ向き合ってみれば、論者を妙に感傷的にさせてしまうから、かもしれない。
「売春」という現象は、多彩な切り口から論じることができることに大きな魅力があると思う。生殖行為をサービスの根幹として半必然的に伴いながら、一般的に繁殖を忌み嫌う=人口の再生産にくみしないところに生物としての「矛盾」を感じ取るか。または、古くからある女性優位の産業として、女性活躍の最前線とみなすか。それとも女性抑圧=家父長制度の忌まわしき残留物とみるか。男が若くて魅力的な女を選ぶように、女がスペックの高い男と効率よくマッチングしたいという男女双方の赤裸々な欲望が生み出した一種の性愛市場と仮定するか。一方、「性欲」的な要素を可能な限り排除して、その独特な建築様式と風変わりな慣習にベースに古き良き「地域」の「伝統性」を語り、さらには国の「伝統文化」として、積極的に価値づけようとするか。
私が今回議題に挙げるのは、近代東京という一つの都市空間における「売春」の在り方と「娼婦」像の変遷について、「普遍的=変わらないもの」と「流動的=変わりゆくもの」をそれぞれ定義してみようというものである。江戸が東京と変わり、一国の首都として整備されていく過程で、「売春」産業も大きな再編成を経験し、業界内部での地位転換から「娼婦」像にある変化が現れた。さらに産業の発展と人口増加が圧力となって市域が拡大し、郊外の田園が市街地に転換されていく流れの中でも、「売春」産業が市街地開発の急先鋒としてその効力を発揮した。東京という都市はまさしく「売春」を基軸の一つとして発展、拡大していったのである。その一片なりとも紹介できれば幸いである。
【1分間スピーチのテーマ】
「風俗街」と聞いて思い浮かぶことは?
【発表者紹介】
まつもと
大学院は都市デザイン、都市史専攻
現在はデジタルマーケティング企業でデータアナリストをしている
【スケジュール】
8:00~8:30 参加者の自己紹介+発表者のお題に沿ったコメント(1分間スピーチ)
(三文会では会のはじめに、参加者のみなさんにひとり1分程度お話しいただきます)
8:30~9:40 発表
9:40~10:00 参加者と発表者の感想
※8:00開始は固定ですが、その他の時間は変動する場合があります
【参加費】
無料
【参加方法】
- 事前登録は不要です。
- Zoomで開催します。(※事前のダウンロードが必要です。)
- 時間になったら下記のURLをクリックし、入室してください。マイク付きイヤホンを使うとより快適です。
会議URL: https://us02web.zoom.us/j/89654422676?pwd=dHc0ZXpMYzRudUNtTnA3ZVdKV1N1UT09
ミーティングID: 896 5442 2676 パスコード: 561812
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